給養員の要素はあるのか!?<海と1佐編>
海自編に続き海と1佐編です!厳密にはほぼ海編です。
あまりにも海がポンコツなので、寡黙でかっこいい?イメージを壊したくない方は読んではなりませぬ!また、海自編の倍以上の長さなのでお気を付けください。
では場所は陸・1佐宅。陸と海でスタートです!
オペラを作る!
海「つまり…。1佐が買ってきた材料が余っているのでオペラを作ると言う話だな?」
陸「そう。お前がな」
海「冗談じゃない。なぜ俺がやらねばならんのだ」
陸「番組では海上自衛隊のスイーツということで紹介したからだ。その上で1佐が用意したんだろ?つまりこの食材は海自の領分である」
海「それならば1佐に作らせろ」
陸「1佐はすでに艦上の人となった…」
海「…」
陸「…」
海「ならば食材はお前にやる。はなから俺のではないが」
陸「断る」
海「俺にはどうすることもできんぞ」
陸「だが断る」
海「随分とかたくなだな」
陸「あれだけ堂々と紹介してみせたのだ、ここは海自の名で作っていただこう」
海「あれは…。『いずも』という環境で腕の立つ海曹が…」
陸「お前だって海上自衛隊の象徴ともいえるだろう。いやそもそも海軍の象徴なのだ。潜在的には作れてもいいはずだ」
海「俺は士官であって作る立場ではない」
陸「だから潜在的と言っているのだ」
海「お前はどうしても俺に作らせる気か…」
陸「そうだ。20人分」
海「なっ…」
陸「しょうがないだろ、それくらいの分量があるんだ」
海「わかった…材料には悪いがそのまま1佐を待て。期限あるものはそういう運命だったのだ」
陸「これだから海軍殿は…」
海「そうは言うが陸、お前とて正直、無茶な振りをしていると思っているだろ」
陸「…」
海「…」
陸「…」
海「何とか言え」
陸「…フッ。確かに。無茶な話だな」
海「それなら…」
陸「ただ普通が言っていたように、その要素が全くないのかどうなのかと思ってな」
海「俺には必要ない」
陸「筋があるかの話だ。俺が手伝ってやるからやってみろ」
海「断る」
陸「…お前は。見ろ、すでに割られてしまった卵、開封された生クリームを見て心が傷まないのか」
海「傷まんな」
陸「お前に伺いを立てた俺が間違っていた」
海「そうだあきらめろ」
陸「いや、強制的にやってもらう。これは決まった話なのだ。そういう圧力がかかっている。メタフィクション的観点からだ」
海「なんだと…」
陸「…だから俺が手助けすると言っている。言うなれば情けだ」
海「オペラが食いたいだけじゃないのか?いや、それにかこつけて寿司屋にでも連れて行けと?」
陸「…ぐっ。そこは…やぶさかではない。ただオペラはフランス発祥のスイーツということもあり興味はある。もちろん俺がいた頃より随分後に開発されたものではあるが」
海「要はお前が食いたいんだろ」
陸「…そうだとしても、食材は海上自衛隊のものだ!」
〇 ● 〇
この後もぐだぐだ続くので、動きが変わるまでちょっと早回し☆
とりあえずレシピ(艦めしのレシピ『特務艇「はしだて」オペラ』)を見るまで進む!
〇 ● 〇
海「なぜ…オペラを選んだ…」
陸「番組で出したからだろ」
海「これだけ手順が25もあるぞ…。他のものは10もいかんものが多いのに…」
陸「正直オペラは圧倒的に難易度が高い。しかしそれをわざわざ外面よく出すところが実に海軍、海自らしいな」
海「…まぁいい。読んでやるからやれ」
陸「お前がやれ」
海「だから無理だと言っている」
陸「腕が生えているだろ。混ぜるくらいしろ。嫌だと言っても今の俺は一歩も引かんぞ」
海「今から寿司屋に誘ってもか?」
陸「えっ…」
海「グラグラじゃねーか」
陸「いや、今回ばかりはダメだ。それは後にしてくれ」
海「行くことは行くのか…」
陸「ほら。とりあえず混ぜればいいところまで用意してやった。手順1のところだ」
海「チッ…」
陸「観念しろ」
〇 ● 〇
こうして世にも奇妙な海のスイーツ作りがはじまった…
〇 ● 〇
海「おい、これは右回りなのか?左回りなのか?」
陸「好きにしろ」
ぐ~~~~るぐ~~~~る
海「これでいいか」
陸「いいわけないだろ。全卵とグラニュー糖がゆっくりそのまま2周しただけで何も変わってないだろ」
海「なら何周すればいいんだ」
陸「周回の問題ではない。いいかお前が持っている器具は泡だて器だ。レシピにも“白っぽくなるまで泡立てる”と書いてあるだろ」
海「白っぽいとは何色だ。俺の中ではこれはもう白っぽいでいい」
陸「貸せ!!」
シャカシャカシャカシャカ…
海「次は手順2か。おい、写真と現状が違いすぎるぞ」
陸「文字を読め文字を。“卵白をつのが立つまで泡立てる”とあるだろ」
海「つのが立つ…。鬼のような形相で混ぜるのか?つまりそれほど大変な作業であると」
陸「遠回りの発想から核心をついてきたな。結果的にあながち間違いではない…」
海「そうか。ではやれ」
陸「お前がな」
ぐ~~~~るぐ~~~~る
シャカシャカシャカシャカ…
海「終わったか?」
陸「フゥ…」
海「言うほど鬼のような形相ではなかったぞ」
陸「(…ミキサーを使えばよかった…。いやしかし簡単な作業と思われても癪に障る…)」
海「確かにこれは骨の折れる作業だった…」
陸「お前は卵白を形そのまま2周させただけだけどな」
海「そうだな。次は手順3だぞ。なにやら混ぜるようだ。奮った粉糖…勇ましい」
陸「勇ましくてたまるか。ふるいにかけ、きめ細かくして混ざりやすくするんだ。よし、粉をふるうか混ぜるかどちらか選べ」
海「すこし、考えさせてくれ…」
陸「リビングに向かうな。今考えろ。そんなに熟慮する内容じゃない」
海「では、混ぜる。多少の経験は積んだからな」
陸「(積まれてない。1粍も積まれてない)ではまずこの2つを混ぜ…もういい、こうやって混ぜるだろ?次に俺がその上に粉をふるうからお前が混ぜろ」
ポンポンポンポン…
ぐ~~~~るぐ~~~~る
海「できたぞ」
陸「お前は3回以上混ぜたら死ぬのか?」
海「かもしれんな」
陸「そうか。では今ここで死を覚悟してくれ。溶かしバターを入れる」
海「お前は目の前で溺れている奴を助けないのか」
陸「お前は溺れないだろ」
海「…」
陸「…」
海「もし目の前で業火に包まれていたら…」
陸「合掌する。いいから混ぜろ」
ぐ~~~~るぐ~~~~る
海「こんなもんか」
陸「なわけはないよな」
海「…」
陸「…」
海「…(スッ)」←ボールを陸の前に移動
陸「…(スッ)」←リターン
海「ハァ…」
陸「まだ手順3だぞ」
海「もう飛ばして25でいいじゃないか」
陸「どうあがいてもここから25へは行かん。いや順番どおりにやれば行くんだが」
海「ではせめて休憩させてくれ。慣れない作業でいささか疲れた」
陸「そうだな…」
海「お前は作業を続けてもかまわんぞ。25まで行ったら呼べ」
陸「それ終わってるな。そうやって俺に押し付けるつもりかもしれんが、そうはいかん。お前が休憩するなら俺も休憩する。言っただろ、これは海自の領分だと」
海「今日はお前を【1日海上自衛官】に任ずる」
陸「断る」
海「【1等海佐】待遇だ」
陸「階級が下がっている。なぁ海、ひとまず手順5のオーブンで焼くところまで行こう」
〇 ● 〇
その後なんとか手順5、“185℃のオーブンで15分焼成する”まで進む。(作業量:海1割、陸9割)
さらにその後は、焼き終わったあとの“荒熱が取れたら”の解釈で、「もう触っても熱くないから大丈夫」と言う陸と、触りもせず「まだ熱い」と言ってコーヒー片手にソファーでくつろぐ海との間でまたひと悶着。
結局言い争うよりも切った方が早いと陸が生地を3等分にする。
〇 ● 〇
海「やっと出来たか」
陸「生地がな。その他にも“Ganache”、“crème au beurre café”、“café sirop”、“glacage chocolat”を作って生地と合わせねばならん」
海「なるほど。フランス語は得意ではないので後はお前がやれ」
陸「レシピは日本語だ」
〇 ● 〇
ただこの調子だと時間がかかりすぎるのと、この後の難易度も高いので、陸の作業量の割合が更に増えることに。
以下手順が長いので、各素材作りからのダイジェスト!
〇 ● 〇
<Ganache>~ガナッシュ~ 手順6~8
海「ガナッシュとは何だ」
陸「生クリームとチョコレートを混ぜ合わせて作るクリームのことだ」
海「そうか、別になくてもいいぞ」
陸「そういうわけにはいかん」
ここでの海の作業は“ゴムベラでゆっくり静かに混ぜ合わせる”の部分(2周でやめる)と荒熱の温度の口出しと味見。
その他は陸。
<crème au beurre café>~コーヒー風味のバタークリーム~ 手順9~13
海「もう茶色い部分は全部ガナッシュとやらにしよう」
陸「それではチョコレートケーキになってしまう。目指すはオペラだ」
海「いっそオペラを観劇すれば、オペラを完遂したことになるのではないか」
陸「オペラの名前はオペラ座に由来があるらしいぞ」
海「正直さしてオペラに興味があるわけではないが、完遂するためにはオペラを…」
陸「ほら、混ぜろ」
ここでの海の作業は“混ぜ合わせる”の部分(2周でやめる。レシピ中に“かくはん”という作業があるけど、そこまではやらない)と人肌という表現の曖昧さに対する異論と味見。
その他は陸。
〇 ● 〇
ダイジェストでお送りしているので短いようですが、実際は海がぐだぐだしているので、非常に時間がかかっています。
そしてここまでの作業でお互いかなり疲弊しています。
〇 ● 〇
<café sirop>~コーヒーシロップ~と成形 手順14~18
海「ついにここまできたか…」
陸「お腹が…すいた…昼…食ってない…もう嫌だ」
海「お前がそんなことでどうする」
陸「うむ…」
海「俺の苦労が水の泡になるぞ」
陸「人はふとした瞬間に殺意を抱く…、俺も人なんだな。海、3回以上混ぜてくれ」
海「断る」
陸「お前はこの期に及んで…」
海「勘違いをするな。ここの手順には混ぜるという行為がない」
陸「ああ…そうかよ…」
ここでの海の作業は“塗り”の部分(ただ1回目で壮大にはみ出したので1回で終了)と人肌以下という表現の曖昧さに対する異論と冷凍庫を開ける。
その他は陸。
<glacage chocolat> ~グラサージュ・ショコラ~と完成へ 手順18~25
海「ここまでやって…まだやることがあるのか…このケーキは…」
陸「…ハラ…ヘッタ」
海「うむ…腹が減ったと言っても、甘いものを食べる気分でもないしな…」
陸「…(こくり)」
海「俺などはお前の作業中にコーヒーを飲みすぎてしまった…」
陸「…」
海「外も暗くなって…って、聞いているのか?」
陸「海…、イマ…寿司屋ニ誘ッテモイイゾ…」
海「お前…。ここまでやってきて、最後の工程であきらめるのか?」
陸「なんで急にやる気を出すんだよ…」
海「俺がやる気はないが、完成しないのも気分が悪い」
陸「…」
海「まぁこういうところが海軍の要素かもしれん」
陸「そうだな。本当にその通りだ。お前は海軍そのままだ。面倒なことを陸軍に押し付けるところが」
海「…」
陸「…」
海「…」
陸「…」
海「…わかった。完成したら寿司だ」
陸「ピク」
海「今は鯵が旬か。まぁ好きなものを食えばいい」
陸「そうかわかったお前は座って待ってろすぐ終わらせてやる」
海「一気にまくし立て…」
陸「しゃべるな話しかけるな視界に入るな時間の無駄だ」
〇 ● 〇
こうしてフルマラソンで言うところの35キロ過ぎ状態の陸は、なけなしの気力と集中力を総動員させて、ついに完成へとこぎ着ける
〇 ● 〇
海「…スゥ」
陸「起きろ!海!出来た!出来たぞ!!!」
海「おぉ、写真と同じだ」
陸「よし、寿司、寿司だ」
海「…あぁそうだな。ひとつ寿司屋に電話を入れておこう」
陸「そうだなスマホはここにあるぞはやく操作をしろ」
海「わかった」
陸「戸締りでもする…k」
1佐「ただいま戻りました~」
海「!」
陸「!」
1佐「あーやっぱり海さんいらしてたんですね。靴があったので」
陸「おか…え…り。なんだ帰宅は今日だったのか」
1佐「ええ。というか…陸さんなんだかやつれているように見えますが、大丈夫ですか?」
陸「ああ…確かに今は精魂尽き果てているが…」
1佐「えぇ!?」
陸「色々あってな…」
1佐「それはいけません!私いいものを持ってきたのでそれで元気をつけてください」
陸「いいもの?」
1佐「こちらです!『私特製のオペラ!』」
陸「!!!!!」
海「!!!!!」
1佐「実はこれ、『いずも』で作って来たんですよ」
陸「…」
海「…」
1佐「せっかくなら番組と同じ味をお届けしようかと思いましてね」
海「『いずも』に…変わりはないよな…?」
1佐「何のことです?」
海「変わりがなければいい」
1佐「まぁまずは見てくださいよ。この出来栄えを」
陸「番組と同じだ」
海「うむ」
1佐「つまりは私には要素があるというわけですよ」
海「味がおかしいとか」
1佐「失礼な!!!そう言うなら食べてみなさい。陸さんもぜひ!」
陸「……ウマい」
海「……うむ」
1佐「そういうことです」
陸「しかし大変だっただろ。一つ一つの作業に時間がかかるし加減も難しい。難易度の高いオペラをこれだけの品質で出せるならすごいな」
1佐「ええ…まぁ多少は給養員に手伝っていただきましたが…」
陸「実はな、俺たちもさっきまでオペラを作っていたんだ」
1佐「ええ…!!??」
陸「お前の買った材料が出しっぱなしだったからな」
海「迷惑なことだ」
1佐「それで陸さんが…いえ【俺たち】ってことは海さんもおやりになったんです…?」
陸「そうなんだよ。ただこれが材料を混ぜる…いや回転させるだけしか能がなくてな」
海「伸ばすやつもやったぞ」
陸「まぁいずれにしろ話にならん」
1佐「へぇ…」
陸「1佐を見習え」
海「フン」
1佐「…」
陸「まったく…1佐はこれだけできるというのにお前は…」
海「はなから俺には必要ないと言っただろ」
1佐「…」
陸「1佐?急に黙り込んでどうした」
1佐「えー…とー…」
海「おい。もしかして…、本当にこれお前が作ったのか?」
1佐「え?まぁ結果的にはそうですね」
陸「多少の手伝いが入ったとしても、あれだけの手順を踏まねば作れんのだ、結果的に作ったと言えるだろ」
1佐「あーー…」
海「歯切れが悪いな」
陸「どうした?」
1佐「んーー…」
海「1佐。ひとつ聞くが、どこまでやった」
陸「回しただけのお前が高圧的に聞くな」
海「伸ばすやつもやったと言っただろ」
陸「そんな些末なこと。ほんとに失礼な奴だな。なぁ1佐?」
1佐「…」
陸「1佐?」
1佐「…………です」
陸「何だって?」
1佐「…パクです」
陸「卵白?」
1佐「いえ…金箔です」
陸「金箔がどうした」
1佐「だから…私がやった作業」
陸「!!!」
海「!!!」
はい!!
あとは蛇足になりそうなのでここまでです!(長かった…)
1佐は『いずも』で一から作ろうとしたんですが、周りに止められて最後の金箔を優雅に振りかけて終わりました。
まぁ腕を心配されたというより、レジェンド幹部なので恐れ多いという方が大きいかもしれません?
それはそうと、その後陸は寿司にありつけたのかが心配です!