今後採るべき戦争指導の大綱

真珠湾攻撃、マレー作戦等の初期段階が終わった後、「今後どうする?」の話


第二期戦争指導1

第二期戦争指導2

第二期戦争指導3

第二期戦争指導4




漫画だけではわかりづらいと思うので、以下、戦史叢書(大本営陸軍部)中の陸軍参謀本部第一部長の回想から、陸海軍の見解の相違についてまとめてみます。


【陸軍の主張】


●開戦直前における連絡会議の判断通り、長期戦争の見地に立ち、この戦争を戦い抜くため長期不敗の政戦態勢を整える

●そのためには、太平洋正面において今後危機を伴うような大規模な進攻作戦は抑制し、陸海空戦力を培養して、おおむね昭和十八年以降に予期される敵の大規模攻勢の撃砕に備えるとともに、西太平洋における海上交通の保護を完璧にし、大東亜共栄圏における長期戦的建設を促進することを優先的に考えるべき

●なおこの間、印度洋地域を重視し、独伊の作戦と呼応し、機を見て印度-西亜打通作戦を完遂し、戦争終末促進に努める




【海軍の主張】


●大東亜戦争の主作戦は終始一貫太平洋正面にあるとの立場に立ち、戦争終結の道は一に米国の戦意を喪失させる事にある

●早期決戦の構想(戦争としては長期化すべきも、作戦としては早期に米国の海空戦力に決定的な打撃を与える。それ以外に長期戦争を戦い抜く道はないという立場)を堅持し、少なくとも如何なる場合においても、攻勢的姿勢を取って敵を守勢に立たせ、敵の反攻拠点を撃滅してその反攻拠点の初動を封鎖することが絶対的に必要

●開戦前に予想された太平洋正面における守勢的戦略(迎撃作戦)を、攻勢的戦略に転換するべき情勢である。その方策としては、米国の対日反攻の最大拠点である豪州攻略を強調


以上のように、積極的進攻を継続すべきとする海軍と、守勢戦略を主張する陸軍の意見が真向から対立し、結局「今後採ルヘキ戦争指導ノ大綱」は、陸海軍の十分な同調を得られぬままに議決することになる。

ちなみにこの採決に対し、陸軍参謀本部第一部長の三月八日の業務日誌には

『戦争指導は恐るべき転換を来すかも知れない
海軍の太平洋攻勢作戦が戦争指導の主催者になる』

と記されている。